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大阪家庭裁判所 昭和51年(少)9452号 決定 1976年11月29日

少年 H・S(昭三一・一二・一生)

主文

少年を昭和五二年一一月二八日まで中等少年院に戻して収容する。

覚醒剤取締法違反保護事件について少年を保護処分に付さない。

理由

(事実)

少年及び保護者の審判廷における陳述並びに本件関係記録によれば、次の事実を認めることができる。

一  少年は、昭和五〇年一〇月三一日、大阪家庭裁判所において、覚せい剤取締法違反により中等少年院(B一)送致の決定を受け和泉少年院に収容され、昭和五一年五月一一日、同少年院を仮退院して指定居住地である吹田市○○町××番××号実父方に帰住し、同日大阪保護観察所に出頭して同観察所の保護観察下に入つた。

二  仮退院に際して、近畿地方更生保護委員会は、法定遵守事項のほか別紙記載のとおりの特別遵守事項を定め、少年は、その遵守を誓約した。

三  ところが、少年は、就職先を捜そうともせず、実父の仕事(大工)を手伝うこともなく徒遊し、やつと同年八月二五日、知人の紹介で飲食店(スナック)に調理師見習として就職しながら、常時遅刻していたため同年九月三〇日に解雇され、その後は同年一〇月一一日頃から五日間堺市内の運送店で就労したのみで、無断外泊を繰り返し、パチンコ、飲酒に耽溺して無為徒食の生活をしていた。

四  又、少年は、同年七月頃から従前交際のあつた覚せい剤施用常習者の○山○幸(同年一〇月二八日覚せい剤取締法違反の罪により懲役三月の刑が確定)との交際を復活させた。

五  そして、少年は、同年一〇月下旬頃上記実父方で、フェニルメチルアミノプロパン塩類を含む覚せい剤粉末を水に溶かして自己の身体に注射して使用した。

(処遇の理由)

少年の上記各行為のうち、三は犯罪者予防更生法三四条二項一号及び特別遵守事項四項に、四は同法三四条二項二号に、五は特別遵守事項三項にそれぞれ違背することが明らかである。

少年は、中等少年院に送致される以前において、いずれもシンナー吸入により昭和四八年九月一七日に不処分決定、昭和四九年五月三〇日に保護観察決定を受けていたものであるが、当時から保護観察官及び保護司の指導を無視し、昭和五一年五月一一日和泉少年院を仮退院した後も、同年七月までの間に保護司宅を三回(うち一回は仮退院当日)訪問したのみで、再び保護観察官及び保護司の指導に背を向けて、約一か月間就労した以外は、自宅でごろ寝するか、パチンコに行くかという怠惰な生活をしていたものである。

少年は、主体性に乏しく、無気力怠惰で極めて依存的消極的であり、このため定職にも就かず徒食しているうち再び覚せい剤使用に至つたもので、このまま放置すれば覚せい剤を常用し、かつ家族からも見放されて浮浪化していく可能性が高い。

ところで、少年の実父は、少年の問題から逃避的であり、実母は、口喧しく少年に注意を与え、かつ少年の消極性をますます増大させる程にその一挙手一投足に監視の目を光らせる一方、少年の要求するまま毎日一、〇〇〇円程度の小遣銭を与えるなど、実父母とも保護能力が無く、又少年も、実母が少年の行動を遂一保護司及び保護観察官に報告することに反発して、少年と実母との関係は破綻状態にある。

以上によれば、少年の健全な育成を期するためには、在宅保護では困難であり、この際少年を少年院に戻して収容し、その矯正教育により、主体性を養い、無気力怠惰な生活態度と訣別すべきであることを自覚させるとともに、実母との関係の改善を図ることが必要であると思料されるところ、その種別は、少年の年齢及び無気力怠惰な生活態度が相当固定化していることを考慮しても、少年の非行性が反社会的というよりむしろ非社会的であることに照らせば、中等少年院が相当であり、その期間は、長期にわたると却つて少年が院内の環境に依存して緊張した気持ちを喪失するおそれがあるため、決定の日から一年間が相当である。

よつて、犯罪者予防更生法四三条一項、少年審判規則五五条、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項を適用して主文一項のとおり決定する。

なお、本件保護事件は、戻収容申請事件と併合審理し、すでにその理由ともなつているものであるから、もはや保護処分の必要性が認められないので、少年法二三条二項を適用して、主文二項のとおり決定する。

(裁判官 楢崎康英)

(特別遵守事項)

一 昭和五一年五月一一日までに実父のもとに帰住すること。

二 昭和五一年五月一一日までに大阪保護観察所に出頭すること。

三 覚せい剤、シンナーなど有害薬物を用いないこと。

四 定職に就いてしんぼう強く働くこと。

五 担当保護司の指示をよく守ること。

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